オフィスでの一日

読書しました。日本の食と文化をつないで観光ルートを作る。

1.東京藝大に調理学部ができる!?

昨年の春、東京芸術大学の構内に辻調理師専門学校が開設され、食と環境の教育研究拠点を目指すことが発表されました。これは、食の分野が教育研究の科目に取り上げられ、教員や学生、地域社会との交流が進むとされているからです。

私はこのニュースを知り、食をテーマにした本を読んでみたいと思い、柏原光太郎氏の著書「ニッポン美食立国論」を読みました。本書は、日本の食を核とした観光立国論を提唱するもので、日本の地方創生や観光振興に大きな可能性を秘めていると感じました

2.日本の食が世界の話題に

日本の食は、世界中で魅力や新鮮さを感じられているようです。その理由は、その土地で育まれた食材や、豊かな自然、そして長い歴史と文化によって食が育まれてきた歴史があるからです。本書では、日本の食の魅力を、外国人が実際に体験できるような様々な観光プランを提案しています。

3.軽井沢のあと、どこに行きたいか

例えば、本書では軽井沢を拠点に、北は浅間山、万座、鹿沢、菅平のスキー場、安曇野、飛騨高山、富山、金沢、加賀へと続く美食ルートを紹介しています。このルート上には、別荘地や土産物屋だけでなく、温泉やスキー場、美術館、山岳地帯、ワイナリーなど、さまざまな観光名所があります。このルート上に、自然が満載の海や山の幸の食材を使った飲食店と併設する宿泊施設を配置することで、外国人が日本の食と文化を満喫できると言います。

本書では、軽井沢以外にも、北陸、瀬戸内など、日本の各地ですでに実現されている事例を挙げながら、食を軸とした観光の可能性を探っている。食の魅力だけでなく、地域の歴史や文化、自然など、さまざまな側面から観光プランを立案することで、訪れる人の満足度を高める提案もしています。

4.食でもてなす日本の課題

本書には、色々な課題も指摘されていて、地方の行政や民間企業の協力が不可欠であることや、対象の旅行者が、富裕層を対象としたものであり、一般層への普及が難しいとか、食の事例は、主に東京や京都などの都心部に集中しているとか、解決が難しい課題がたくさんあるといいます。
とはいえ、私は本書を読み終わったあと、日本の食の特徴を知りたい人や、食を観光資源として活用することに興味がある経営者におすすめの書籍だと感じました。本書は、日本の食の魅力を見直し、新たな観光のモデルを作るきっかけになるように感じらたからです。

5.短時間で日本を観光するために必要なもの

ところで、私はGoToEat(全国旅行支援)にのせられて、日本の観光地で、ものすごいオーバーツーリズムを経験しており、日本の観光の品質低下や迷惑を経験しました。そのような経験から、日本国内をめぐって観光するためには、日本の交通インフラに課題があると感じています。

そもそも、外国人が日本を旅行する基本ルートは、大動脈といわれている東海道や山陽、九州、北陸、東北、北海道に施設された新幹線駅を拠点にして、そこから日本の内陸部の観光地に移動すると考えられます。

一部の日本人は、内陸部に高速道路が開通しているのを知っているので、自家用車を使うことで、自宅を出発して、目的地に近いインターチェンジで高速道路を降りて、そこから目的地まで1時間とか2時間ドライブしながら、目的地に到着するでしょう。

しかし、外国の旅行者が、日本に求めているのは、短い時間(長くて一週間ぐらい)で、日本の観光ルートを周遊したい願望あると思います。滞在期間が1か月とか確保できる外国人は、超がつく富裕層以外、そんなに多く存在しないでしょう。

6.飛行機で来た外国人の最初の目的地は?

また、飛行機で日本に到着した外国人が、新幹線の駅で下車して、その先の日本の内陸地をどのような手段で移動するのか、日本は整備されていません。過去に、日本にインバウンド客が多くなってきたころ、成田空港から東京都心に入る移動手段として、高級ミニバンを利用した白タクが、たくさん空港にいました。これは現在、違法行為です。

本書では、新幹線の各駅にミニバン数十台と外国語に堪能な運転手を配置して、太平洋側の新幹線駅から、外国人客を乗せて、日本の内陸部を巡る観光ルートを一週間ぐらいかけて観光して、最終的に日本海側の新幹線駅まで輸送して観光を終了できる仕組みが必要だと言っています。

そういう意味で、日本の食や観光地を巡るルートは、富裕層かつ長期滞在型の外国人客向けの旅行プランであって、全てのインバウンド層にマッチする観光プランでは無いように感じました。

7.不安な時、食事を作る人が増える

最後に、私はこの文章を書きながら、外国人の美食ルート以上に、普通に生活している日本人のための美食ルートの開拓が必要だと感じています。高級レストランや宿泊施設を拠点とした、高価な観光ルートよりも、地元の路地裏にあるB級グルメをめぐる美食ルートや食べ歩きルートが、必要で魅力があると感じています。

今、世界中で、戦争や疫病、経済不安、格差などが、発生しています。そんな時は、なぜか自炊が流行します。食事は自分で作る人が増えます。自分で食事を作り出すと、次に知りたくなるのは、レシピとか食材、調理器具(包丁や鍋)です。それを知るため、お金と時間を使って外食する。この時期、人間として、心やすらぐ憩いの場所で、リーズナブルに食事をしたくありませんか。

私は、外食するなら、例えば、東京なら吉田類さんの「酒場放浪記」で紹介されているようなお店で食事したいです。下町の居酒屋や、地元の人しか知らないような隠れた名店を巡る美食ルートや地方ごとの食べ歩きガイドは、いくつあっても、歓迎します。もちろん、書かれている情報は、ステコミや代筆屋のウソの情報ではなくて、旬の生の現地レポートが一番いいです。

本書を読んで、食に対して、美食というよりは、感動や幸せ、癒しを目的とした、至福の食事をしたいなあ、と感じた次第です。

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