20冊のダイジェスト版で自分の読解力がわかる
本書の発行日は、2022年10月です。その時点で、実際に書店で発売されている20冊のノンフィクション本が選定されていて、それぞれからサビの部分(一番面白い部分)を編者によって厳選されて掲載されています。
なので、本書は今一番、旬な話題(人権とか環境、技術、芸能など)を抜き出したダイジェスト版のような感じの内容的になってます。
そして本書の中で、上記のダイジェスト版の文章を分析していくことで、その文章に表現されている考え方や物の見方について、読者に問いかけていきます。
私は感じました。ひょっとしたら私、読解力、無いかも!?
この本の書名が「中高生のための・・」とありますが、と中高生というより、今、現役世代として活躍している私たち社会人が、身に付けておくべき「正しい」そして「正確に」文章を理解する方法(読解力)は何か、その読解力の習得方法を説明しています。
独特だが、工夫されている本のページのレイアウト
本書を開いて最初に驚くのは、各ページのレイアウト(段組みとか用語解説)が独特の構成になっていることです。
この本は、どこから読み始めればいいのか。一体この文章は20冊の著者のうち誰が書いた文章なのだろうか。少しわかりにくい感じです。
ですが、本書を読み進めていくと、なぜこんなページのレイアウトになっているのか、その意味がわかります。
本書ではたくさんの部分で、読者に対して読解力を試す問いかけ(手引き)をされます。
すると読者は、その問いに正しく答えるため、いったん読み終えた文章を、再度、見直しや読み直したい衝動にかられます。
読者は、あと戻りすべきページは、どこにあったのか。あるいはその何行目だったか。それを見つける作業をしないといけません。
本書は、上記の作業を読者がやり易いように、各ページに行番号や文字数が細かく記述されていて、読者の読み直し作業が、とてもやりやすいようにページのレイアウトが工夫されていることがわかります。
社会人に必要な読解力とは何?
本書では、ノンフィクションを理解するのに必要な読解力は、以下の四つの力を身に付けることだ、と説明しています。
(1)文章には、一般的な見え方や思い込みに対して、著者が意図的に内容をかく乱する表現やストーリー展開がされていて、それに読者が惑わされない力が必要だ。
(2)文章には、XだからこそかえってYだ、という逆説的な表現がされていて、それを見抜ける力が必要だ。
(3)文章には、目に見えない思いや考えを、数値や図表で現実に見えるように表現されていて、その箇所を見つけ出す力が必要だ。
(4)文章には、複数の無関係なストーリーが展開されているが、最後や後半で全てに共通点がある結末になっていて、読者に感動や驚愕など与える演出を楽しむ力が必要だ。
本書を読み進めると、ノンフィクションな出来事も、最終的には著者によってかなるの部分で演出されたストーリー展開で書かれていることが多い。それが文章というものだ。そういうことが、わかってきます。
ノンフィクションに限らず、ニュースや評論や小説など全ての文章は、著者の意図を理解することが、とても大切だとわかります。
そして、その意図を発見することが読解力であると、本書は解説しています。
読者が、上記の読解力を持って本を読むことが出来ると、本を読む作業が面白くて楽しい作業になるし、多くの文章や情報の集まりから、フェイクや出まかせの情報を見抜く力に発展するだろうと、私は感じました。
悩んだとき。それが読書するとき。
誰しも、悩みや問題が多くて先が見えないとか、友達や相談者がひとりもいない、どこに進めばいいかわからない、そんな瞬間があると思います。
そんな時は、出来るだけ大量の本を読めばいい、そんなことがわかってきます。
現在、私たちの周りには、意味不明でかく乱させるようなSNSやブログ、見ていると時間を無限に消費させるような動画が、氾濫しています。
そういった内容は、私たちの目の前を勢いよく通り過ぎていく、意味の無い情報のことが多いでしょう。
たくさんの情報に、社会人はゆっくり考える時間をさけないので、脳や体がそれに振り回されてしまいます。
多少でも時間をとって、新聞や本など、たくさんの文章に触れて、それを正しく読解できる、同じ出来事や事件でも、それに対して人間の様々なビュー(視点)が存在することに気が付く。
読書には不思議な力があるように感じます。
多くの気づきを本から得ると、その中のひとつに一筋の光や閃(ひらめ)きが発生し、暗中模索の状態を抜け出すきっかけとなるケースがあるものです。
最後に、困ったときこそ、たくさんの本を読む。そして、たくさんの著者や発信者の意図や表現を理解する。
そんな行動が、私たち社会人が、上手に成長していくために必要であることが、本書から伝わってきました。