オフィスでの一日

読書しました。製品が消えて無くなる法則がわかる

本書を読むとわかること

この本には、2000年以降に、期待されて登場したものの、世の中から消えて無くなってしまった製品の、失敗パターン(法則)が、整理して書かれています。

大企業であっても多くの失敗をしている

この本には、例えば以下のような製品の失敗事例が書かれています。

OSのM社のウインドウズ・フォン。パソコンとスマホの統合を狙った製品でしたが、そもそもPCアプリとスマホアプリの操作性は、使い勝手が違うことがわかって消えたそうです。

検索G社のグーグル・プラス。広告収入の拡大のためSNSの仕組みを検索エンジンに組み込む製品でしたが、Facebookの強敵があるなか、検索やYouTubeやGメールのIDも同一に統合してしまったことから、大量のユーザー退会が出て消えたそうです。

通販A社のアマゾン・ファイアーGO。電話(スマホやタブレット)から品物をすぐにオーダーできる製品でしたが、電話に通販の仕組み邪魔者で、ユーザーが全く増えなくて消えたそうです。

スマホA社のニュートン。スマホのiPhoneより15年以上も前にA社はPC(パワーブック)で成功し、さらに個人用携帯情報端末(PDA)で成功を狙った製品でしたが、この商品の開発費用が自社の全売上の10倍以上かかることがわかって消えたそうです。

GAFAのような巨大企業も、激しく失敗を繰り返していて、みな失敗を繰り返しながら成長していることがわかります。

え!あの日本の会社も失敗している・・

もちろん、日本の失敗事例も書かれています。

N社のWii U。プレステを追い越す目的の製品でしたが、ゲーム開発ツールの使い方の難易度が高すぎてゲーム会社がソフトを全く作れずに消えたそうです。

フリースやエアリズムなどアパレルで好調なU社。単独事業の脱却を狙って野菜サブスクの製品をスタートさせましたが、キャベツやトマトの主菜の欠品を繰り返し、あえなく消えたそうです。

確かに、上記のような失敗、あったことを思い出して、少し悲しい気分にもなりますね。

感染症の危機の直前。日本企業の驚きの失敗例とは

この本の失敗事例で、興味深いのは、セブンペイの失敗例です。

感染症がまん延する少し前のこと。2018年の年末ですが、ひとあし早く、ペイペイ(PayPay)というキャッシュレス決済サービス(ネット決済の製品です)が世に出ました。

その時、ペイペイは巨大なキャンペーンをスタートさせ、代金の20%が返金される、40回の決済すると1回分の全額が戻るという、いわゆる100億円キャンペーンを始めました。

私も、もちろんドキドキしながらチャレンジしたことを、憶えています。

上記を契機に、日本では「〇〇ペイ」といった、決済サービスの競争が激化しました。

外国人の犯罪集団にお金が盗まれた

上記のペイペイを追って、S&I社は、2019年7月1日にセブンペイという決済サービスをスタートさせます。

しかし、セブンペイは、決済サービスの企画や設計、開発のスピードが速すぎて、内容を十分に詰め切れずに、スマホのコンビニアプリのユーザーIDとパスワードを流用させて、この決済サービスをスタートさせました。

スタートの翌日、7月2日のこと。外国人の犯罪集団が、お客様のユーザーIDとパスワードを入手しました。

そして犯罪集団は、勝手にセブンペイに現金チャージし、コンビニ店舗で大量の電子タバコを買いあさり、不正に転売しました。

上記は、報道で大ニュースになりました。

セブンペイは、すぐに決済サービスに利用制限をかけ、その翌々日の7月4日に、セブンペイの幹部が、今回の不正について記者会見をしました。

そこで、セブンペイの幹部の応答が、驚きの発言になってしまいます。

記者の問い。「決済の時、二段階認証が無いのでセキュリティが甘くないか?」。

幹部の答え。「決済サービスのテストで十分にセキュリティのチェックをした」。

また幹部の答え。「ユーザーIDとパスワードは、コンビニアプリと決済サービスで連動させている。二段階という言葉の意味がよくわからない」という趣旨の、発言をしました。

この本に書かれている上記のやりとりは、感染症が拡大する少し前の事件でしたので、記憶が鮮明ですね。

翌日の報道では、セブンペイを作った人たちは、ネット決済の安全(セキュリティ)に関して知識がない。そんな報道がされてしまいます。

この時、ニュースやブログで「二段階認証」の用語解説が、思いっきり「バズった」ことは、私たちの記憶に新しいですね。

結局のところ、セブンペイという製品は、2019年7月1日のスタートから、わずか三か月後の2019年9月末日に、サービス終了され、消えてなくなりました。

この本では、上記の終了の理由を「開発に時間がかかる」「再スタートまでリスクが残る」「ユーザーの信頼は戻らない」などと書かれています。

ユーザーのネット決済の安全意識が高まる

私の思いですが、セブンペイを開発した人が全て、ネット決済の安全知識が無かった、というわけではないと思います。

しかし、セブンペイという製品を企画した幹部やリーダーは、ネット決済のセキュリティに疎かった、と思われます。

この失敗の事例は、悲しい事件でしたが、その反面、全国ユーザーに、ネット決済のセキュリティの重要性を、広く認知させた効果があったと思われます。

実際、上記の犯罪があった以降、セブンペイだけでなく、全てのネット決済のPCやスマホの操作が、二段階プラス「合い言葉」とか「生年月日」入力せよ。そんな感じで、複雑になりましたが、ネット決済の安全強化につながったように思います。

製品開発を成功させるにはどうすればいいか?

新しいものを作るという作業は、商品や事業開発、独立、起業、創業する時に必要になる作業です。

この本に書かれている失敗の製品は、単なる思い付きや、押し付け、コピー製品などを作る行動では「なく」、しっかり事前に調査や宣伝などマーケティングしたあと、製品を作ってリリースしたと書かれています。

しかし、世に出した製品は、全てが成功するわけではなく、多くが失敗する。そして、その失敗にはパターン(法則)がある、と書かれています。

私は、この本を読みながら、スマホという製品(この本でスマホは触れられていません)が、失敗せず大成功した理由を、考えてみました。

しかし、スマホの歴史をひも解いても、成功する設計図があったわけでは、ありませんでした。

それ以上に、最初にアップル社のジョブズ氏が製品化したスマホは、今、成功しているスマホと較べると、ハードの仕様やユーザーの使い方が、かなり変化したり拡張していることが、わかります。

結局のところ、成功した製品は、最初の企画や設計の時の製品と、全く違ったものになっていることが、わかります。

なので、製品の成功や失敗は、ユーザーや時代の流れを見て、製品の内容を改良や調整させながら、上手に変化の流れに乗って初めて製品が成功するのかなあ・・。そんなことを感じました。

みなさんも、この本に書かれた失敗事例を、上手に避けながら、製品や技術、そして自分(という製品)の開発を、進めていってほしいと、感じています。

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