ちょっといい話

読書しました。携帯料金の値下げ競争。1,000日間の攻防がわかる。

1.波乗り記者の暗躍。公務員の倫理規定の違反。白ロムや2年縛りも過去の話題に。

本書は、携帯電話の料金値下げの舞台となった、携帯電話会社と総務省の官僚の動きや交渉、障壁の様子を、2017年12月から2020年9月までの1000日間を通して、書かれています。

今、波乗り記者(大手会社が行政に対して実行する「接待」や「ロビー活動」の専門家)の存在が、ニュースやブログで話題です。

「波」というのは、携帯電話や衛星放送、地上デジタル放送、NHKなどで使っている電波のことです。

電波は、総務省の認可を受けて、使用できます。

電波を使って商売をしている放送や電話会社は、自社のビジネスが有利になるように、総務省の官僚との関係を、とても重視しています。

総務省の官僚が、東北新社(衛星の電波)の接待を受けるとか、NTT社長(携帯の電波)が国会の承認喚問に、呼び出される。

日に日に、蜜月(みつげつ(後述します))の状況が、明確になってきています。

今後、地上デジタルとか衛星、NHKとか、電波を使う会社と総務省のあいだの、電波の認可に関する「電波利権」の奪い合いが、より大きな問題になって、火を噴き始めるかもしれません。

本書には、ニュースやブログで話題の、大手会社や総務省の、社員や官僚の実名が、たくさん出てきます。

読んでいて、かなりハラハラとか、ドキドキする本です。

2.蜜月(みつげつ)は昔からたくさんあった

この記事を書いている時点で、フツーの利用者の月額料金が、2,980円に、横並びになりました。

しかし、3月に入ってドコモが、月額料金を2,700円に値下げしました。

また、auやソフトバンクが、通話料金の1年間の無料キャンペーンを始めて、値下げ競争に、拍車がかかっています。

高性能なスマホを買うために、白ロム(SIMロック解除)のスマホを求めて、東京や大阪の電気街に行った時代が、もう昔の話になってしまって、寂しい時代です。

それと、契約期間の2年縛りは、価格競争の中で、無くなりつつあります。

本書を読むと、10年とか20年とか、かなり昔から、電波を使う会社と、総務省のあいだで、接待やプレゼントなど、公務員の倫理規定の違反の「蜜月(みつげつ)」が、あったのかなあ・・。

本書を読むと、そういうことを、感じます。

3.発端は菅(すが)官房長官のツルの一声で始まる

2015年に、当時の安倍首相が、家計支出が「電話料金の負担率が大きくて問題」と言いました。

安倍政権は、アベノミクスが功を奏して、政権期間が、長くなりそうでした。

その結果、内閣の官邸が、総務省や金融省などの官僚の人事を、上手に把握できたそうです。

ところが、当時の携帯大手と総務省の官僚の動きが、スピーディではなくて、進捗が遅かった。

理由は、すでに5千万人以上のユーザーを獲得している携帯大手は、毎月でユーザーひとりにつき、約7千円の売り上げを、確保していたそうでうす。

携帯大手は、かなりビジネス的に好調でした。

なので、携帯大手は、料金値下げのパワーなど、まったく出ません。

携帯大手が、総務省の官僚に仕掛ける蜜月もあってか、状況が改善しませんでした。

その後、2017年12月に、4社目の携帯大手として楽天が、参入の表明しました。

また、その時の菅(すが)官房長官が、2018年8月に「大手電話料金は四割、値下げの余地ある」と、ぶちまけました。

上記の言葉は、私たちも、記憶に新しいですね。

でも、本当に携帯電話の料金が、安くなるのか。

その時の現状は、iPhoneの値段がとても高いですし、長期間ユーザーに値下げの恩恵が無いし、SIMロックは解除されないし、2年縛りで違約金9,800円なので、とても疑心暗鬼に、なりました。

ついに、当時の菅(すが)官房長官が、動きの遅い、携帯大手と総務省の官僚に対して「官邸主導」で、値下げ改革をスタートさせました。

ようやく、この記事を書いている、2021年の春。

携帯大手の、価格競争が、スタートしそうな感じに、なってきました。

4.スマホが故障したらネットにアクセスする手段を失う時代に突入

ITに詳しい読者が、知っていることは、スマホにかかる料金は、音声やデータの料金と、スマホ(ハード)の本体の料金は、きちんとわけて買う、ということです。

例えば、パソコン(PC)を買う時は、パソコンの本体価格を支払う。

次に、ソフトがいるので、OSやオフィスソフト、ゲームのソフトの価格を支払う。

最後に、パソコンをネット接続するのに、ネットの回線を購入して、ネットの使用料金(プロバイダ料金など)を支払う。

スマホも、スマホの本体と、ネット(音声とデータ)を、きちんと別々に購入して、お金を支払うことが、正しい方法だと、感じます。

携帯大手では、今、料金が、以下の3点をポイントに、競争が始まっています。

(1)スマホの本体を、好きなように購入する。

(2)月額の通信は、音声5分間かけ放題。データ通信20ギガバイトまで。

(3)上記に、音声が制限なしとか、データ通信が制限なしとか、500円とか1000円のオプション料金が加算。

注意点がありますが、携帯大手が、価格競争するプランを採用すると、スマホ操作がわからないとか、故障したからといって、携帯会社の店舗に行って、サポートを受けることが「出来なく」なります。

トラブルや問い合わせも、すべてネット経由になります。

そうなると、自分がスマホ1台しか持っていないと、それが故障すると、ネットにアクセスする方法が、皆無の状態です。

ですので、ネットにつながるパソコン本体とか、2台目のスマホとか、LANに接続できる代替手段を考えておく必要が、出てくるように感じます。

5.音声とキャッシュレス決済やクーポン、身分証明書に特化しそうな携帯電話

菅(すが)官房長官が、2019年10月(消費税の増税)に、端末と通信を、きちんと分離するように、携帯大手に、指示しました。

この時、携帯大手と総務省の官僚のあいだで、激しいやりとりが、あったそうです。

例えば、2年縛りの途中解約料の9,800円が、一旦、改定されて1,000円に、なったことがありました。

でも、上記の本当の事実は、携帯大手と総務省の官僚のあいだでは、当初の解約料を、9,800円から6,000円へ値下げ、だったそうです。

この金額に、菅(すが)官房長官が激怒して1,000円にせよ、と指示したエピソードが、本書に書かれていました。

上記の1,000円という金額は、気合(一応、お客様のアンケート調査で決めたといわれています)で、決められたそうです。

携帯大手と総務省の官僚で、決めた金額ではなく、強く「官邸主導」の、仕組みが働いて、決められたと書かれています。

こも記事は、競争価格がスタートしそうな前夜、2月下旬に書かれています。

携帯大手の料金の仕組みは、どんどん変化が始まっていて、契約期間の「縛り」がなくなるとか、SIMロックも「すぐに解除」が、可能になるそうです。

これからは、スマホのメンテナンスや知識は、自動車のメンテナンスのように、ある程度、ユーザーが行わないといけない時代になってきました。

本書は、そういうことを、考えさせられる内容だと、感じました。

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